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ここは 茨城県久慈郡大子町 風向明媚な景勝地で候
久慈川沿いのJR水郡線西金駅より3キロ山に入りて候
平成2年12月 修武館大子山荘剣道場が完成
拙者四十路の砌 旅の宿で急病に遭遇いたし 傷みの床から眺めし月に 生き方を改め 幼い頃の純真さを取り戻し 自然の恵みの中に生かされている己を悟ったので候
ここを与えられしは我が天命 剣禅一如の修行の場と成す
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ご覧じ候え
阿武隈連山 朝の眺望でござる
鶯めが拙者を起こしに 向かいの山から訪ねて来申す
四十雀めも ツーピーツーピーと啼きて 負けてはいませんぞ
歌舞伎ものの雉めも 親分気取りで木陰から現れ申すぞ
囲炉裏の鉄瓶から松風の音が聞こえ申す
竈からは 飯の炊けたにおいが腹に伝わりもうす
さあーさ 炉辺にお寄り下され
朝飯を召し上がって下され
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朝飯の後には 裏山に分け入りて山菜など採り申そうぞ
可憐な野の花にも目を向けて下され
花無心に咲きて蝶を招き 蝶無心にて花を尋ねる
息とし生きるものの息使いを聴き申せ
虫も鳥も獣たちも ありのままで ありのままに 生きてい申すぞ
裏山の斜面には二輪草が咲き申し候ぞ よくよくご覧じ候らえ
稚児ゆり あざみ 釣り船草 りんどう 山百合 鳴子ゆり なども 見落としなきように 足を進め下され
蕨や蕗を摘み帰り 夕べに一献供し申そうぞ
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我が道場の内をご覧じ候らえ
これぞ我が剣の極意ぞ 生死のはざまなるぞ
「直心は是れ道場なり 虚仮なきが故に」
これはここに分け入る者に諭す我が人生の掲示なり
二度とない人生で候 息とし生きるものの息吹を聴き候え 魂の輝きを見つめて生き候ぞ
心が迷えるときは ここに座し候え
執着する心を捨て候え 肩の重荷を捨て候え
「 本 来 無 一 物」
「無一物中無尽蔵 花ありつきあり楼台あり」
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あー何としたことよ 拙者としたものが 恥ずかしきことなり
難しき話は無粋と言うもので御座った
ささ 炉辺に座して貴殿の諸国漫遊の面白き話などお聞かせくだされ
今宵は酒を酌み交わし心底から話を聞きとうござる
都の面白き話など夜更けまでお聞かせくだされ
「把 手 共 行」 「交 剣 知 愛」
さあーさ 奥久慈の地酒でござる
久慈川の鮎も焼け具合がよろしいようでござるぞ
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